起業のきっかけは？「なんとなく、友達と遊ぶにはどうしたらいいかと考えていたら、起業すればいいんじゃないかと思って」──。

　取材先で時折、こんな答えが返ってくる。ベンチャー企業の若き経営者は、明確なビジョンのもと起業した人もいれば、「なんとなく」起業「してしまった」人もいる。

　国内のある大手周辺機器メーカーは最近、ソフトとハードを組み合わせた新規事業を立ち上げた。そのメーカーの担当者は「会社で育ってきた人間は無理難題を言われれば、『そんなこと、できるはずがない』が口ぐせのようにでてしまう」と自戒する。

　一方で、「仕事で関わりのあるベンチャー企業の経営者は、『できないはずはないので、やってみます』と必ず答える」のだという。

　その周辺機器メーカーの社長も、もとはベンチャーとして、身一つで国内有数の企業に育て上げてきた。「うちの社長とベンチャー企業の経営者は、たぶん相通じるものがあるのだろう。『できないはずはない』と周囲をぐいぐい引っ張っていく。ついて行くのがやっと」と苦笑する。

　「なんとなく」起業したベンチャーでも経営者魂は同じ。「儲かってないっすよ」と言いつつも表情は明るい。「できないはずはない」という失敗を恐れない意志があり、それが彼らを突き動かしているように思える。（環）