旅の蜃気楼

東大名誉教授、BCNをかく語りき

2008/03/17 15:38

週刊BCN 2008年03月17日vol.1227掲載

【本郷発】3月10日は東京大学の合格発表の日。BCN編集部に近い本郷キャンパスはお祭り騒ぎだ。その東大に入りやすくなったのはご存じですか? 東大は昨年から、門戸を開放したのです。本郷通りに面する赤門はあまりにも有名。安田講堂に行くには正門。東大病院に入る門は龍岡門。根津駅に向かうには弥生門。それとは別に森鴎外の『雁』に登場する無縁坂から入る門が昨年、突然できた。このほかにも数個の門ができて入りやすくなった。国立大学法人に変身した証のようだ。時代は進化している。

▼東大といえば先日、本郷三丁目駅に近い中華料理店に入ったら、名誉教授の國井利泰先生にばったり出くわした。相変わらずおしゃれな眼鏡が光っている。國井先生とは眼鏡仲間だ。東大の学士会館の近くにある眼鏡店でお会いして以来、おめがねにかなったようで、時折り、食事をご一緒する。私は老眼の進行に合わせて眼鏡屋に通う。先生は半年ごとのペースで新調する眼鏡愛好家だ。ところが、「妻は月に1個のペースですから…」。妻とはリコー常務執行役員の國井秀子さんのことだ。

▼一緒に食事をしていたら、突然、「BCNの旅のコラム、毎週読んでいますよ」と言われた。「えっ!?」。「私はね。旅と山が好きだから…」。先生がまさか『旅の蜃気楼』の愛読者だったとは。「そういえば、先生は学生時代に、八ヶ岳の大同心をロッククライミングしていて、滑落したんですよね」「そう、岩がすっぽり抜けましてね。突然、空中に自分がいるんですよ。落ちた距離は50メートルかな」。50メートルは1ピッチでちょうどザイルの長さだ。「どうして距離がわかったんですか」「重力加速度を知っていたから、時計をすぐ見たんですよ。落ちるまでに2秒かかったから、それに時間をかけて」というわけだ。

▼「今のBCNの紙面を心配しちゃうな。ケイタイの記事がないですよね。メインフレームからパソコンに時代が変わったでしょ。それと同じことが起きているんですよ」。先生は今、東京大学産学連携プラザに初のベンチャー企業として入居した会社モルフォの最高技術顧問だ。画像の手ぶれ防止技術の最高峰だ。時代は確実に進んでいる。(BCN社長・奥田喜久男)
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