旅の蜃気楼

殺し文句は「トルコと日本は兄弟じゃないか」

2008/03/03 15:38

週刊BCN 2008年03月03日vol.1225掲載

【イスタンブール発】トルコは親日的だといわれている。1985年のイラン・イラク戦争で、イランに在留していた日本人が日本政府の救援を受けられなかった時に、トルコ政府が派遣したトルコ航空機によって、無事日本に生還できたといったエピソードがある。とはいえ、いくら国が親日的でも、住んでいる人がそうとは限らない。現地で確かめたいことの一つだった。

▼イスタンブールは観光客が多いせいか、露天商がとにかく日本語で話しかけてくる。みんな日本語が達者だが、もちろんこれは商売のため。親しみがこもっているのとは、ちょっと違う感じがした。呼び込みを無視してやり過ごそうとすると、今度は韓国語や中国語で話しかけてきた。すごい語学力だ。

▼そんななか、トルコ人が親日的だということがよくわかる出来事があった。トルコでは、買い物のときに値切るのが一般的だ。しかし観光客は慣れてないせいもあり、なかなか値切るのが難しい。そこで、値切るときの切り札として、現地の人に教えてもらった言葉がある。それが「トルコと日本は兄弟じゃないか。まけてくれよ」だ。

▼本当に効果があるのか疑問だったが、イスタンブールの酒屋でラクという地酒を買うときにためしてみたら、それまでまったく値切ってくれなかったのにいきなり4割引にしてくれた。しかも満面の笑みで「なんだ日本人だったのか。ラクを飲むなんて珍しいな。うれしいぜ」と言うではないか。「おれの周りには日本人を好きなやつが多いぜ。なぜかはわからないけれどもな」とのこと。

▼この国では、「トルコと日本は兄弟」はよく言われるそうだ。確かに四季があるとか地震が多いところなど、風土に共通点が多い。また、19世紀以降の近代化への取り組みなど、歴史的にも似た部分がある。人の気質も、真面目で押しつけがましさがないところが似ている気がした。なぜ親日的なのか、本当の理由はよくわからないが、この絆を大事にしたいものだ。(『BCNランキング』マガジン編集部・清水隆哉)

 トルコと日本の友好のきっかけは、エルトゥール号遭難事件だと記憶する。明治23年9月16日、串本沖での出来事だ。友好に、理屈などは要らない。(BCN社長・奥田喜久男)
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