北斗七星

北斗七星 2008年2月25日付 Vol.1224

2008/02/25 15:38

週刊BCN 2008年02月25日vol.1224掲載

▼人類史上、最大の繁栄を遂げた古代ローマ帝国。このローマが滅びた原因は、一般的には支配層の腐敗や貧富の格差などで社会が乱れたためとされる。だが、東京大学の小林一輔名誉教授は著書で、「約200年の間に大量建設した建造物の維持補修が国家財政を圧迫した」と、社会資本の観点で論じている。つまり、公共事業費を老朽化したインフラの修繕に費やし、財政が困窮したわけだ。後にローマ帝国は東西に分裂し、滅亡への坂道を転げ落ちていった。

▼ローマの転落は、今の日本の状況に似ている。1960年代に道路など主要なインフラを急速に整備した日本。このインフラは驚異的な高度経済成長を遂げる基盤となった。しかし、短期間に構築したため、経年劣化に対応するための修繕時期が集中する。欧米の場合は時間をかけて整備しているため、古いインフラから順に更新することができるが、日本では一時期に財政負担がのしかかるのだ。

▼国会では「道路特定財源」の暫定税率などに関して与野党で大議論が起こっている。双方の論とも「あちらを立てればこちらが立たず」の感はあるが、政治家は地元指向に陥らず、国全体を見渡した道路整備のあり方を議論すべきである。企業や自治体のITインフラも一時期、オフコンが一斉に導入された。小規模企業と自治体にはこの旧式機器が大量に存在し、オープン化を進めてシステムを効率化する際の重しになっている。当時の無計画性を嘆いても仕方ないが、何とかすべき時だ。
  • 1