旅の蜃気楼

猥雑さが心地よいイスタンブールの街角

2008/02/18 15:38

週刊BCN 2008年02月18日vol.1223掲載

【トルコ発】トルコの首都はイスタンブールだと誤解している人が多いだろう。かくいう私もその一人。実際にトルコに行くまで、首都がアンカラであることを知らなかった。それくらい無知な私が新婚旅行先にトルコを選んだのは、まさにイスタンブールを訪ねたいと思ったからだ。

▼イスタンブールのアタチュルク空港で飛行機から降りた私を出迎えたのは、雪景色とむせ返るような排気ガスの匂いだった。イスタンブールの気温は東京に近いと聞いていたので、まさか雪が積もっているとは思わなかった。「雪のイスタンブール」というとロマンチックだが、あまりに空気が汚く、雪景色も猥雑に感じてしまう。

▼猥雑といえば、イスタンブールという都市自体が雑然とした雰囲気をもっている。特にヨーロッパ側の旧市街がそうだ。縦横にめぐる暗く細い坂道にごちゃごちゃと建物が並び、けっしてきれいな街並みとはいえない。パン売りの屋台やあやしい土産物を売る露天商が多く、歩いているとよく声をかけられる。道路はどこも渋滞で、車の間をむりやり歩行者が通り抜けていく。そんな雑然とした街の中に、いきなり壮麗なモスクが建っていたりして、まるでカオスの世界だ。ただ、それが心地いいのが、イスタンブールの懐の深さなのかもしれない。

▼旅行中にモロッコ人の男性と知り合った。モロッコはトルコと同じイスラム圏でアルコールは禁止されているはずだが、彼は食事中、ワインをがばがば飲んでいる。酒を飲んでいいのかと尋ねると「モロッコでもトルコでも、法律では禁止されていないよ。親は嫌がるから、彼らの前では飲まないけどね」「飲み始めたきっかけはなんだったの?」「14歳のとき、放課後に友達と学校の裏山で隠れて飲んだんだ。そしたら美味しかったんだよ」。どこの国でも似たようなことをやっている人がいるなあと大笑いしたものだった。

 いまでも、私の心はしばしばイスタンブールに飛んでいく。(『BCNランキング』マガジン編集部・清水隆哉)

 私の友人のモスリムたちにも酒好きはいる。イスラムの教えも、国もしくは人により様々のようだ。知るほどに奥は深い。(BCN社長・奥田喜久男)
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