旅の蜃気楼

月の砂漠のICT事情は

2007/12/03 15:38

週刊BCN 2007年12月03日vol.1214掲載

【本郷発】「月のー砂漠をー、はーるーばるとぉ」。中国の砂漠を旅したことがある。車で横断したのだが、行けども行けども、砂の丘。もう途中からカメラのシャッターを押すこともしなくなった。子どもの頃、星と三日月の夜空に駱駝の背に乗ったお姫さまがゆらりゆらりと道行きする、そんな印象を砂漠に抱いていた。その延長上にイスラムの世界があり、いまもって“未知の国”の印象が強い。特に、彼の地のICT事情ともなると、頭の中に??がつらなる。

▼日本にもモスクが増えてきた。元麻布の中国大使館の隣に、アラブ イスラーム学院がある。ここはモスクであり、日本におけるイスラム文化の発信源だ。もう1か月ほども前のことだ。学院で「サウジと日本両国のICT利用事情のシンポジウム」が開かれた。両国の利用状況を報告しあうことで、相互の理解を深めようという企画だ。写真の右側の人がサウジアラビア大使、左側の人が学院の学院長。そこでは日本語とアラビア語と英語の3か国語が飛び交う不思議な世界を体験した。講演では、サウジ・ペトロリアム社アジアIT代表のジィヤド・アルシャハラニ先生による「石油化学産業におけるICT利活用、アラムコの事例」のほかアラブ イスラーム学院副学院長で早稲田大学大学院博士後期課程のブカーリ・イサム先生による「サウジアラビアにおけるICT産業化育成」などが続く。これらのテーマは、サウジの最近の実情を伝えるもので、砂漠の匂いなどはしなかった。ICT文明の真っ只中にいるサウジを感じさせた。イスラム世界の近代化事情については、認識を変えるべきだと実感した。

▼学院の会場には150人ほどが集まり、私が議長を務めた。サウジのICT事情以上に、なぜ、BCNの奥田に議長役の依頼があったのか、といぶかる向きが多いと思われる。が、それはそれとして、議長の依頼には戸惑った。サウジのICT事情に関する知識がまったくないからだ。そこで考えた。知識がないから、素直な気持ちで、議長役を務めながら学ぼう、と。シンポジウムの5時間ほどの間に大きく心境が変化した。いつか、サウジを旅するぞ。旅は素敵だ。友達が増える。(BCN社長・奥田喜久男)
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