旅の蜃気楼

異説!? 香港の変貌ぶりは「面子」のお蔭

2007/11/12 15:38

週刊BCN 2007年11月12日vol.1211掲載

 植民地統治100年を経て、香港は1997年7月1日、中国に還った。あれから10年がたち、中国は龍の勢いだ。現地の観察記を佐相記者に委ねる。(BCN社長 奥田喜久男)【香港発】10月中旬、香港を訪れた。今回で2回めだ。1回めは昨年12月。ITU主催でネットワーク関連の世界的なイベント「テレコムワールド2006」の時期だった。香港国際空港から中心部まで車で約30分だ。その時は「中心部までは何もない」という印象。国際空港が移動し、中心部までの空き地に何かを建設している最中だったらしい。

▼2回め。空港からまたもや車を使って香港の中心部まで。そこで目にしたのは高層アパート群だ。何もない平地という印象が強かったのに、わずか10か月間で高層アパート群を建設したということだ。「すごい!だけど、なぜ?」。「香港は地震がないからね」というのが大方の見方。耐震構造を気にせず建設しているのが理由のようだ。

▼こうした状況を目の当たりにすると、中国という国は凄まじい勢いで変化を遂げているんだなと感じる。香港は1997年まで英国の領土だったことから、もちろん中国本土よりも進んでいる。中心部には高層ビルが立ち並び、ブランドショップが軒を連ねる。「100万ドルの夜景」もあるし、旅行客が多く訪れる“観光地”だ。それが、さらに急速に発展しようとしている。

▼これは、中国の民族性と関係しているのではないか。特筆すべき民族性の1つに「面子」という言葉が思い浮かぶ。中国人に対する最大の侮辱は、「面子を潰すこと」といわれている。「笑って済ませる」ことが得意な日本人と違い、中国人は人前で欠点を指摘されると恨みとして残す。国際空港から中心部までを「辺ぴな場所ですね」などと言おうものなら、最大の侮辱と受け取られてしまうかもしれない。こうした民族性、つまり「面子を保つ」ために手を打ったのではないか。

▼民族性はグローバル化が進むとともに薄れるかもしれないので、すべての中国の人がそうだとは限らない。ただ、空港から中心部までの様変わりを目の当たりにして、中国人の思い切りのよさ、行動の素早さに脱帽せざるを得ない。(週刊BCN編集部 佐相彰彦)
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