旅の蜃気楼

地球の裏側でタンゴのレッスン

2007/10/22 15:38

週刊BCN 2007年10月22日vol.1208掲載

 人の行動とは不可解なものだ。BCNの旅好きスタッフ・佐伯太郎君とタンゴのつながりがよく分からない。年齢的に“黒猫”との関わりとは思えないが…。(BCN社長 奥田喜久男)

【ブエノスアイレス発】9月中旬、日本から一番遠い国・アルゼンチンは想像以上に寒かった。出発したときの服装といえばポロシャツに長袖のTシャツという飛行機の中で寒くない最低限の格好。地球の裏側の春がこんなに寒いとは。ブエノスアイレスに着いて最初にしたことといえば、ウィンドブレーカーをスーツケースの奥底から引っ張り出す作業だった。

▼気候の違いに驚きながらホテルに向かう。出国時は南米イコール危険だというイメージが頭にあって非常に緊張していたが、警戒しながら街に出てみるとそこらじゅうに強盗がいるような殺伐とした空気は感じられない。ベルリンやウィーンのようなヨーロッパの中核都市、そんな雰囲気だ。たくさんの人がいて、店がある。この国の首都も、あまり他人に興味をもつ暇はないようで、日本人もじろじろと見られたりはしない。ホテルの周りを一通り歩き、街の危険性がそれほどでもないと分かり安心した。というのも、私はタンゴのレッスンを受けるつもりだからだ。それも夜9時に。

▼昼間に安全を確認したとはいえ、念には念を入れパスポートを置いてダンスホールへ向かった。土地勘が全くないうえに、お目当てのダンスホールはホテルのフロントで適当に見つくろってもらったところ。自分の行き当たりばったりな行動にいささか呆れつつタクシーに乗り込む。きっと魅力的な女性が情熱のステップを教えてくれるはずと密かに期待していたが、到着して愕然とした。そのホールにいたのは推定65歳くらいの老夫婦。向こうは英語が全く話せない。「ワン、トゥー、スリー、クワトロ…」。4以降の数はいきなりスペイン語になる。私もスペイン語はからっきし。身振り手振りでステップやフォーム、リズムのとりかたを教えてもらいながら、1時間半のレッスンはあっという間に終わった。アルゼンチンの文化を肌で感じつつ1日目の夜は更けていった。〔つづく〕(BCNランキング営業グループ・佐伯太郎)
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