旅の蜃気楼
「五色」と「五大」に宇宙を想う
2007/09/03 15:38
週刊BCN 2007年09月03日vol.1201掲載
▼滝を見るカモシカコースと、池を見るシラビソコースがある。最初の参加者はカモシカコースから始まる。人数制限もしていて1グループは6人だ。ガイドがついて、ゆっくりした歩行で8時間の山歩きとなる。樹林が蔽い繁る山道を、沢の音を聞きながら、アップダウンで進む。樹林帯から沢筋にコースをとった瞬間、左前方の斜面を見上げると、名瀑が目に飛び込んでくる。美しい。最初に見るのが「久手御越滝」、次が「池之俣御輿滝」、さらに歩くと「青垂の滝・雄と雌」となる。最後に「布引の滝」を樹林越しに見て、脚が疲れたころに終了だ。
▼この山域は分水嶺の尾根が続いていて、降った雨が日本海側と太平洋側に分かれる地点だ。五色ヶ原の水は、高山盆地からの宮川と合流し、奥飛騨を経由して神通川となって富山湾にそそぐ。空から落ちた水は地形にそって流れる。自然体とはうまく言ったものだ。山の奥深い奥飛騨には、高天原神話があるのをご存じですか。飛騨高山の旅を滝巡りと神話にまで膨らませてはいかがだろう。
▼五色とは五行思想によると、緑、赤、黄、白、黒だ。オリンピックでは白が青になる。五行思想は自然哲学の思想で、木、火、土、金、水の元素で天地万物が変化するというものだ。月と日を加えると7曜日となる。仏教思想にも宇宙の構成要素がある。五大といって、地、水、火で三大、風を加えて四大、空を入れて五大となる。天上から並べると、空、風、火、水、地。これを五輪ともいう。滝のオーラを感じながら、悠久の思索をするのもいいものだ。“五大”というのはBCNの入社式で知った名だ。今春の新入社員の1人が「山田五大」という名前なのである。五大つながりだ。知識というのは不思議に連鎖する。(BCN社長・奥田喜久男)
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