旅の蜃気楼

掛け算で生まれる? 旅のスタイル

2007/08/13 15:38

週刊BCN 2007年08月13日vol.1199掲載

【本郷発】旅好きの人は多い。前号まで当コラム『旅の蜃気楼』をコラボ(連携)したBCNのスタッフ・吉野理(まこと)は26歳。コラム子からみれば、若僧だ。だが、以前たびたび連載をお願いした大塚商会会長の大塚実さんの85歳からすると、58歳の私などは、洟垂れ小僧。う~ん。このところ、洟は垂らしていないつもりだ、と強がってみるが、大塚さんの58歳から社長引退までの二十数年間の事業活動をみると、確かに、まだまだ洟垂れ小僧だわ。その大塚さんも旅が好きで好きでたまらない性分だ。数十年にわたる紀行文は、『私の旅の足あと』としてBCNから上梓した。大塚さんの現在の旅の“スタイル”は豪華客船による世界旅行だ。

▼26歳、58歳、85歳。旅の“スタイル”はさまざまだ。それぞれの好み、年齢と、資力などの要素が混ざり合って旅の“スタイル”が形づくられ、味わいを醸し出す。イエメンはまだ旅したことがない。前号までのイエメン紀行を読んでいて、訪ねたい誘惑に駆られた。が、吉野君のような、“貧乏”、いや失礼、冒険旅行は不安が先に立って、もうできない。だから外国の路地裏で沸き起こる突然の感動は二度と味わえないだろうな。いわんや、豪華客船での優雅な旅は、現実味に欠けるね。旅の“スタイル”は、筋力と金力の掛け算で成り立っているのかもしれないな。

▼掛け算の結果である旅の“スタイル”は人それぞれで、それぞれが堂々と自慢しあうから、不思議だ。安心安全旅行を心がける人にも、豪華客船で旅する人にも若僧の頃があって、“貧乏”いや冒険旅行の紀行文を読みながら、涎を垂らしたのではないか、と思う次第である。知らない街に初めて立って、思い切り深呼吸をする。街の“におい”を胸いっぱいに嗅ぐ。多くの場合、違和感を覚える。それも最初だけだ。数日すると、同化している。身体は便利だな。環境に順応するようにできている。慣れてしまうと、当たり前になって、感じなくなる。それが日常だ。すると旅がしたくなる。旅は“五感”の手入れと、自分探しだと思っている。

▼さて、お盆休み。山形にある月山の柴灯祭に出かけよう。17年連続だ。元気をもらってこよう。(BCN社長・奥田喜久男)
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