旅の蜃気楼
イエメン紀行(中)── 家電店で見た奇妙な光景
2007/07/23 15:38
週刊BCN 2007年07月23日vol.1196掲載
【イエメン発】首都サナアでの2日めは、ツアー会社めぐりで情報収集。シャハラはぜひ訪ねてみたい。深い谷にかかる石橋で有名な天空都市だ。しかし、残念なことにクローズ中だという。それなら、古代のダムとシバ王国の遺跡で有名なマーリブだ。何社か回るうちに、わりとフィーリング的に合うツアー会社を見つけた。マーリブツアーは翌日出発で予約。そのツアー会社のオーナーは日本語を勉強中で、アラビア語を教えてもらうのと引き換えに“にわか日本語教師”を引き受けた。
▼習ったばかりのアラビア語を話したくて、スーク(市場)に向かった。「いくら?」と「もっと安く」の用語をひたすら口にしてみることから始めた。現地の子供とも遊んだ。驚いたのは、小学生くらいの小さい子からもWelcome to Yemen!という言葉を聞いたことだ。歓迎の言葉をもらって、なんかうれしくなった。
▼サナアの新市街にいくとネットカフェや家電の店もある。日本にメールするためネットカフェに寄って、日本語が使える台はあるか聞いてみると、OKという返事。さっそく使ってみると肝心の速度は遅い。検索するのに5-6秒かかっているようで、イライラする。家電店ではよく「Sony」を目にした。ブラビアがショーウィンドウに展示されていた。その店の中では、イスラムの黒い服に身を包んだ女性の目がテレビ画面に向けられている。なんとも不思議な光景ではある。イスラム教は偶像崇拝禁止だ。そして、アイドルという言葉の元の意味は偶像。イスラムの信者的アイドルが、コーラン調のメロディーに恋する女の子の気持ちをこめた歌をのせてステージに立っている。その様子を、日本製テレビでイスラム教徒が「萌えー」の構図である。何を考えているんだろう。
▼そんなことで、2日めは過ぎた。かつてこんなにのんびりしたスタートの旅はなかった。でも、何がのんびりで何が忙しいのかなんてあまり意味がない。大切なのはその国のストーリーにふれることだ。 〔つづく〕(商品企画グループ・吉野理)
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