旅の蜃気楼
団塊の世代、それぞれの道を往く
2007/05/14 15:38
週刊BCN 2007年05月14日vol.1186掲載
▼毎年、GWになると白銀の立山は観光客、スキー客、登山客で賑わう。真っ白に化粧したカルデラの立山が夕陽に照らされると、実に美しい。素敵だ。立山アルペンルートにある雪の大谷の最高積雪は、今冬14メートルだった。カルデラの中心に位置する雷鳥沢にテントを張って夜を迎える。深夜、空を見上げると、きらきら輝く満天の星空に、心がすっきりする。凍えるほどの寒さのせいかもしれないが…。こんな世界を教えてくれた人がいる。松下電器のパソコン事業部で、法務担当をしていた山根悦男さんだ。4年前の退職時に連絡をもらった。「奥田さんの後輩になるが、いいか」と。彼は伊勢にある皇學館大学の神道学科に入学して神職になった。いまは大学院で、「神道と禅の精神性の比較」をテーマに研究している。
▼一大王国を形成したソフトバンクの創業は1981年。BCNと同じ年だ。ソフトバンクには孫正義さんの出身地・九州からの仲間が何人かいた。野村栄一さんもその一人。野村さんは早々に退職して、時間の半分をパソコン業界以外に費やした。自宅兼オフィスの居間を陶器や絵画の画廊にして、作家の人脈を広げ、パソコン業界の仲間たちの協会を設立してかつての人脈を保った。そのうち、蕎麦名人・翁達磨の高橋邦弘さんに弟子入りし、なかなかの腕になった。煎茶道にも凝って、ますます趣味人の世界へのめり込むのかと思っていたら、突然、今年4月、墨田区の押上駅からほど近い商店街に『長屋茶房 天真庵』を店開きしたのだ。さっそく出向いた。昔ながらの商店街を歩いて築60年の家を磨いた天真庵の暖簾をくぐった。蕎麦には日本酒だ。島根・加茂福酒造の『死神』は死ぬほど旨い。押上には、2011年に第二東京タワーが完成する。この年はデジタル時代の幕開けだ。思い思いの価値の多様化が始まった。(BCN社長・奥田喜久男)
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