旅の蜃気楼
本当の平和を待ち焦がれる韓国
2007/04/16 15:38
週刊BCN 2007年04月16日vol.1183掲載
▼ソウルの市内には大きな米軍キャンプがある。2011年には平沢へ移転する。38度線にある非武装地帯の板門店は1953年7月27日から米軍主導の国連軍が駐留している。「現在700名の軍隊がいます。韓国軍が660名、米国軍が40名。以前は半数が米国軍でした。戦争に関する統帥権は現在も韓国にはありません」と案内人が説明する。板門店は北朝鮮と対峙している。北朝鮮と韓国の国旗が大きさを競って風になびいている。以前は、スピーカーの音量も競っていた。言葉による情報撹乱戦だが、今はない。北朝鮮側を見ると、十数キロ先に開城(ケソン)市を望むことができる。韓国企業が投資してつくった工場群が見える。「韓国は4月1日、韓米自由貿易協定(FTA)の締結を合意しました。ケソンの工場で作った製品を韓国製とみなしてもらって、米国に売ります」。北朝鮮と韓国は同じ民族だ。北朝鮮が韓国企業の生産基地になれば、韓国の生産力は勢いづく。「韓国は今、アメリカに対して世論が二分しています。20代、30代の人は南北統一を願っています。嫌米です。50代以上はその逆です」。
▼バスはイムジン川を右に見てソウルに走った。「本日は、FTAの反対デモがソウル駅からアメリカ大使館にかけて行われます。かなり大きなデモです。4月1日には焼身自殺者もでました。日本は平和ボケなどといわれていますが、ここ韓国には本当の意味での平和はきていません。平和がくるように祈っていてくださいませ」。バスは拍手で沸いた。案内人は40歳前後の女性だった。アジアは新しい時代を迎えている。(BCN社長・奥田喜久男)
- 1