旅の蜃気楼
カードざんまいの旅、恩人の墓参
2007/03/26 15:38
週刊BCN 2007年03月26日vol.1180掲載
▼「快適なお部屋」は上層階にあった。カードキーだ。エレベーターに同乗した他の宿泊客は普通のカギで、違いがある。だが、部屋に入ると、なんとも寂しい雰囲気なのだ。旅館でいえば、“素泊まり”といった雰囲気。もう時間も遅かったのでルームサービスと思ってフロントに尋ねた。「やっておりません。近くに、コンビニがあります」。おかげで安くついた。素泊まりと割り切れば、感謝すべきかもしれない。チェックアウトはクレジットカードで支払った。
▼大阪駅発11時14分の電車に「Suica」を使って乗った。武田尾駅集合12時30分。宝塚駅を過ぎると、福知山線っぽくなってくる。車窓を楽しみながら、武田尾についた。山間の閑散とした駅で、メガソフトの津田格専務が迎えてくれた。「わざわざ、遠いところありがとうございます」。車は山間をくねくねしながら、海抜を上げた。突然、開けると立派な家がぽつりぽつりと続く。車は里山の道を曲がって奥まったところで止まった。冬枯れした草が陽の光を浴びて、ぽかぽか気分だ。「やっときたよ」。彼が愛用していたThink Padを模した墓石があった。まだぴかぴか光っている。「MEGA SOFT創始者前坂昇ここに眠る」。BCNのITジュニア賞は彼の力があって実現した。NPO法人ITジュニア育成交流協会の発足を墓前に報告した。帰途、東京駅に着いて地下鉄丸の内線に乗った。「そうだ、今日からSuicaが使えるんだ」。1枚の「BIC CAMERA Suica」(提携カード)で彼岸まで旅をした。お墓に彼の気配はなかった。やはり、大空を舞っているんだ。これからはこんな旅が増えそうな年齢になった。(BCN社長・奥田喜久男)
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