旅の蜃気楼
久々の京都、感動と懐古にひたる
2007/03/05 15:38
週刊BCN 2007年03月05日vol.1177掲載
▼先週、久しぶりに京都を訪ねた。その時も、東の八坂神社、西の松尾大社、真ん中あたりに二条城と、記憶を呼び戻していた。京都全日空ホテルに宿泊して、翌日、「二条通」を散策した。通り沿いには「鯖寿司」「和菓子」「干菓子」「骨董店」「謡曲の本屋」があって、道をジグザグに歩く。細い路地は車の一方通行だ。二条通を西から東に向いて歩いたから、背中から車が迫ってくる。車を気にしながら、ぶらりぶらり歩く。
▼京都は町並みと、町家が美しい。町家を改造したかっこいい喫茶店に入った。中京区の二条通柳馬場東入ル晴明町650にある。京都通(つう)の読者はこの町名でおおよその場所がお分かりだろう。御所の南辺りだ。『cafe bibliotic Hello!』という。町家を天井までぶち抜いて壁面を下から上までの書架とした。一階と中二階を喫茶にして、ライブラリーからお気に入りの本を持ってきて、ソファーやら、木の椅子やら、大きな机の前だとかで、これもまたお気に入りの場所に座る。小さなガラス窓越しに見える箱庭は苔むしていて水が打ってある。
▼ぶらり、高瀬川まで足を伸ばした。高瀬川沿いの三条大橋付近に「瑞泉寺」がある。豊臣秀次公の墓所だ。京都の寺では珍しく拝観料がいらない。入ってすぐ右手に秀次ゆかりの39人の墓がある。秀吉には子がなかったため、姉の子を養子にとって関白とする。が、その後、実子秀頼が生まれて、秀次を高野山で切腹に処し、一族の女子供を三条河原の中州で処刑にした。穴を掘って遺体を埋め、見せしめのための大きな塚とした。その後、この塚に瑞泉寺ができる。肉親同士の殺戮はなんと切ないことか。拝観料以上の浄財を預けた。(BCN社長・奥田喜久男)
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