旅の蜃気楼
辺境の地で嗅ぐIT化の気配
2006/09/25 15:38
週刊BCN 2006年09月25日vol.1155掲載
▼新疆ウイグル自治区はそのうち8か国と隣接している。国境のほとんどが、6000メートル以上の険しい山脈だ。それでも人は古代から東西南北に行き交い、血族、民族、言語、宗教が入り交じっている。ウイグルでは中国という国のアイデンティティーが見つけにくい。見つけるとすれば、中国社会主義であることだ。“主義”という哲学を13億人の同一性としたわけだ。時代環境は変化している。規制する同一性と規制しない同一性は権利と義務の本質的な議論に行き着く。
▼さてさて、旅行記に筆を戻そう。パキスタンとの国境に行った。クンジジュラブ峠だ。地図を見て国境の位置は知っている。が、国境というラインはない。そこに国境警備隊の検問がないと普通の尾根だ。その当たり前さに、なんだか感動した。隣接国にはイスラム文化圏が多い。その地には紛争のエネルギーがたぎっている。外交と安全保障にかけるコストは莫大だという印象を得た。特にNY911以降、石油を産出するタクラマカン砂漠周辺の道路は急速に整備が進んでいる。軍隊の移動が容易になる。中国の資本主義化は大河の流れだ。“主義”が変化しつつある。目が離せない。
▼“最果ての地”という響きに旅心をくすぐられる。どんな人が住んでいるのか。インターネットはつながるのか。あれもこれもと、聞きたいことばかり。中国最西端の地、新疆ウイグル自治地区の首都はウルムチだ。外来人口約200万人。街の4割近くの人が携帯を使っているようだ。今や、「中国全土が潜在IT市場」と確信する。鄧小平の南巡講話を境に中国は変わった。(BCN社長・奥田喜久男)
- 1