北斗七星

北斗七星 2006年6月26日付 Vol.1143

2006/06/26 15:38

週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載

▼自社の製品を使用して事故、それも死亡事故が起きた場合には、まず何をおいても「お詫び」をするというのが日本人のごく普通の感覚だ。これを逆なでしたのが、エレベーターメーカー・シンドラー社の対応。最初に口にしたのが、「当社は世界第二位のエレベーターメーカーで」品質には何の問題もないという、開き直りのコメントだった。

▼総じて、日本以外の国々では「謝らない」といわれる。先に謝ったほうが後々不利になるという日常の出来事の積み重ねがそのような習慣を形成してきたのだろうが、訴訟社会がその傾向に拍車をかけているようだ。米国では、誰かが病院で亡くなった際に、真っ先に駆けつけるのは弁護士だという話がある。医療事故の臭いがするなら、遺族に訴訟を起こさせて損害賠償を勝ち取ろうというわけだ。弁護士が鵜の目鷹の目で儲け話を探しているような社会は、ずいぶん住み心地が悪いと思う。

▼シンドラー社の一連の対応は、訴訟を意識した言動とみなせば納得がいく。〝高品質〟をくつがえすような事故が相次いで明るみにでると、原因は制御プログラムのミスであったことを初めて認めた。その制御盤は日本製といわれているが、いずれ裁判となれば、賠償責任を負わされることになるかもしれない。

▼国を挙げて弁護士の大増員が図られようとしている。米国型の訴訟社会が出現すれば、システム欠陥の事故があった場合などに、力の弱いSIerが餌食になることも考えられる。それだけは願い下げにしたい。
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