北斗七星

北斗七星 2006年3月27日付 Vol.1131

2006/03/27 15:38

週刊BCN 2006年03月27日vol.1131掲載

▼IT投資の本格的な回復で、ソフト業界にも10年に一度の好景気という言葉が聞かれるようになってきた。しかし、日本経済復活の原動力が国際競争力の強化による輸出拡大にあることを思えば、ソフト業界がこのまま後詰めの内需依存型でいいのかという疑問が頭をよぎる。IT業界で海外連携といえば、いまだに低コストの開発委託先という考えが主流だが、そろそろソフトの輸出市場としての可能性に目を向けるべきではないだろうか。

▼日本型のソフト資産が世界に進出できるノウハウを持っていないかといえば、決してそんなことはない。トヨタのカンバン方式はいうまでもなく、コンビニの販売、棚割管理や、超過密ダイヤのなかで時間通りに列車やトラックをを運行させる工程管理も世界に例を見ない。なにより世界一、品質やサービスに敏感な日本の消費者を満足させる日本の管理システムそのものが最大のソフト資産のはずだ。

▼急成長がつづくBRICsの有力新興市場には、こうしたノウハウを必要とする中小企業が無数に存在する。大量の部材調達や資金、現地要員の教育が必要な製造業に比べれば、ソフトの海外展開のほうがはるかに障壁は低い。ブロードバンド環境の整った都市部の企業相手なら、システムを国内においたASPサービスの可能性もある。業界を問わず、人口が減少する内需依存型の産業に未来はない。景気回復の今こそ、日本のソフト産業が海外に市場を求める最後のチャンスといえるはずだ。
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