旅の蜃気楼

研究者の憧れの街、つくば…

2005/11/28 15:38

週刊BCN 2005年11月28日vol.1115掲載

▼欅が赤く色づいている。空は抜けるように真っ青だ。並木の向こうに、ホテルオークラが、ぽつんと建っている。自然に囲まれた筑波では、空が大きい。深呼吸をしたくなる。と同時に、寂しい街だった。つくばエキスプレスが開通して、およそ3か月だが、地元の人は「人が増えた。地価が上がった」という。ほんとだろうか。11月17日、「テクノフェア2005inつくば」に出かけた。出発駅はもちろん、秋葉原だ。駅周辺には、ずいぶん高いビルが建った。駅前のスペースは広々として、空気の通りが良くなった。秋葉原にあった独特の、「あの怪しげな…」雰囲気がなくなった。

▼本郷のBCN編集部からタクシーで「秋葉原のヨドバシ」に向かった。迷わず車は店先に止まる。降車してTXのホームに向かう。つくば駅まで20駅ある。踏み切りはひとつもない。それなのにその日は、線路に人が入ったという情報があって、のろのろ運転だ。間の悪いことだ。それでも東京駅から高速バスに乗るより快適だ。沿線のあちこちでは農地を宅地にならしている。ショベルカーが活躍している。その遠くには美しい筑波山が見える。3年もすれば、風景も変化するだろう。美しい街づくりをしてほしい。つくば駅に着いた。地上に出る。建設現場の音がする。おや、風景が違う。ここはどこだろうか。ランドマークのホテルオークラをきょろきょろと探す。展示会場のつくばカピオまで、歩いた。今年は75社が出展していた。昨年より20社も多いという。盛況だ。といっても、出展者の多くは手持ち無沙汰の様子だ。

▼会場を後にした。午後3時11分、つくば駅を出発した。TXの走りは滑らかだ。手すりにコインを置いても落ちないのが自慢だ。転た寝をしていると、いつの間にか新御徒町。大江戸線に乗り換えた。近くて便利だ。2つ目の本郷三丁目駅で下車した。編集部まで歩いて、椅子に座った。時計を見たら、午後4時11分。ほんとだ早い。60分で着いた。「筑波大学の偏差値が上がるんじゃないかな…。下宿しなくても通える距離だからね」。ほんとに筑波は近くなった。研究者の憧れの街になってほしい。(本郷発・奥田喜久男)
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