北斗七星

北斗七星 2005年11月7日付 Vol.1112

2005/11/07 15:38

週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載

▼パソコン需要の回復がようやく軌道に乗り始めた。主要メーカーの中間決算をみると、金額ベースは依然厳しいが、台数ではなんとか前年比2ケタ増の確保というシナリオが定着してきたようだ。店頭市場も、年末商戦の立ち上がりは順調な滑り出しとなっている。しかし、パソコンの需要構造自体が拡大してきたのかといえば、必ずしもそうではなさそうだ。

▼企業需要を底上げしているのは、2000年問題を前に対策を講じたシステムの更新需要が中心。個人需要ではブロードバンドの普及で、個人のネット売買が株式市場を動かすまでになった。しかし、大半の個人ユーザーにとっては、ネットはサイトの閲覧や小規模な通販の窓口にすぎない。日本のパソコン需要は、確かに低迷期からは、抜け出しつつあるが、まだ安定的な拡大のための足場は脆弱だ。

▼これは単にパソコン産業だけの問題ではない。ITやブロードバンドは普及したが、その潜在的な能力を、社会の進化に生かそうという取り組みが乏しい。日本が抱える難題、例えば二酸化炭素の排出規制、年金問題、760兆円に及ぶ国の借金などにしても、ITの活用で改善できる部分は少なくない。ネットを活用すれば、選挙や国勢調査に投じられる膨大な紙とコストは劇的に軽減できる。税、年金の未払い問題にしても、一定のルールのもとに所得と支出を電子化することで、捕捉率は一気に高まるはずだ。パソコンの需要構造をみると、社会の根幹にITによる変革を取り込もうという重要な部分に大きなすき間が口を開けている。
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