旅の蜃気楼

出版おめでとうございます

2005/10/17 15:38

週刊BCN 2005年10月17日vol.1109掲載

▼片岡さんからコンピュータ・エージ社刊「激動のITデジタル家電」という書籍をいただいた。扉の間に紙が挟んである。「謹呈、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。旧NECパーソナルシステムを辞し、1年が経過するのを契機に、社長としてパソコン事業を通して経験したこと、体感したことを中心に人生のひとつの足跡として書籍の形でまとめました。未熟な内容ではありますが、ご笑納いただければ幸甚です。2005年10月、片岡洋一謹白」。書籍のサブタイトルは「生き抜くためのマーケッティング戦略」。まずは「出版おめでとうございます。初めての出版ですか」。

▼奥付を見る。『COBOL,FORTRANプログラミング入門』日本能率協会刊。『コンパイラの理論と応用』学研刊とある。今回、上梓した書籍とは内容がずいぶんかけ離れている。驚きだ。著者の略歴は1943年、佐賀県生まれ。65年、九州大学理学部数学科卒業。同年日本電気入社。ソフトウェア研究・開発に従事とある。「もともとは技術屋なんですね」と驚くと、「そうですよー」と口をとがらせる。そういえば、コラム子の周辺には数学屋が多い。その人たちの共通性を洗い出すと、理論とロマンの共存ではないか、と勝手に思っている。ともかく、書籍を読んでみた。

▼片岡さん曰く。市場環境・事業環境の大きな変化を身体で感じ、従来のDNAを意識して変えることが急務である。実際の経験をもとにいうと、パソコンのメーカーからメーカー販社に就いたとき、あまりの流通在庫の多さにびっくりして、1四半期に渡りほとんど出荷を停止するという荒治療をした。従来のDNAを断ったわけだ。次に購買環境の変化を真摯に受け止め、販売店とのあり方も、過去を振り返らないで、お互いがWin-Winの関係になるように、新たな付き合い方を展開した。顧客は「物」から「こと」の購買に移行した。明日は今日の続きではない。変化を読み、過去のDNAを断つ。片岡さんの話はまだまだ続く。NECはかつてパソコン市場でトップシェアを誇っていたが、不覚にも2番手になり、苦しみを経てトップに返り咲いている。書籍もいいがライブもいいな。(本郷発・奥田喜久男)
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