旅の蜃気楼

言いたい放題の対談

2005/10/03 15:38

週刊BCN 2005年10月03日vol.1107掲載

▼おもしろい対談記事であった。懐かしくて、一気に読んだ。といってもA4版変形雑誌の6ページ記事だから、そんなに多いボリュームではない。が、ゲップが出るほど濃厚であった。「ASAHIパソコン」10月1日号は米マイクロソフト前副社長の古川享さんと、アスキー元社長の西和彦さんの、言いたい放題の対談を掲載した。まず驚いたのは大きな体躯だ。背はもともと高いお二人だが、体重が威風堂々である。もうこれだけで圧倒される。それに、このご両人は知識が豊富で、地球上のあらゆる出来事を知っているのではないかと錯覚させるほど。その知識が止めどなく発射されるから、読んでいる方は「うーーーん」と唸るばかりである。

▼この2人が話題にするのは、ビル・ゲイツである。西さんは1980年代前半のマイクロソフトの黎明期を牽引した人物である。特にエレクトロニクス商品の予知能力に長けていて、10年先のパソコンワールドを誰よりも正確に見据えていた。あたかも「夢を見ている青年の様子」で、2、30歳年上のコンピュータ技術者たちに明日を語って歩いていた。対談記事にこんなくだりがある。当時、21世紀をどう予想していたかといえば、「アラン・ケイが68年に提唱したダイナブックの実現を思っていた。携帯電話については普及は予想していたが、こんなに賢くなるという発想はなかった」。80年の頃である。

▼対談相手の古川さんはアスキーを86年に退社して、マイクロソフトの日本法人を設立。今年6月にMSを退社するまで、「長年ビル・ゲイツの忠実な部下をやって、燃え尽きたんだろうな」と、西さんの古川評である。退社するまで、古川さんはMSで3番目の古参社員であったと思う。ビル・ゲイツ、スティーブ・バルマー、古川享である。なんと歴史的な存在ではないか。大の電車マニアで、趣味が高じて米国でローカル線の鉄道会社のオーナーになった。エレクトロニクス文化論を語らせたら、いつの間にか夜明けになっていよう。技術は新しい市場を創造する。市場の成長は社会の原動力となる。老け込むのはまだ早い。(本郷発・奥田喜久男)
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