北斗七星

北斗七星 2005年7月25日付 Vol.1098

2005/07/25 15:38

週刊BCN 2005年07月25日vol.1098掲載

▼集積回路(IC)を発明したジャック・キルビー氏に1度だけ会ったことがある。日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が1991年、筑波研究開発センター(茨城県つくば市)を開設した時に招かれてキルビー氏もそこに現れた。同センターのエントランスに、キルビー氏が発明したICの実物大模型も展示されており、TIを巨大な半導体メーカーにした基礎を作った人物として招かれたのだと記憶している。日本の半導体メーカーにとっては悪名高き「キルビー特許」の生みの親。日本を訪問した背景には、特許問題や日米半導体協定に対するデモンストレーションもあったはずだ。

▼見上げるような大男で、失礼ながら老いたプロレスラーのような風情。それに圧倒され、駆け出しの半導体担当記者だった北斗子は、挨拶させてもらいながら声の記憶がない。6月20日にがんのため81歳で亡くなったが、当時すでに相当な高齢のように見えた。

▼世の中は移り変わり、半導体産業のビッグカンパニーといえばインテルを除けば、米国企業から日本企業へ、さらに韓国企業へと移ってきた。韓国のサムスン電子がこのほど発表した今年4─6月期の業績は、半導体分野で主力のDRAM市況の悪化などから46%減と大幅減益となった。

▼あの大男が発明したICが飛躍的に発展し、コンピュータの小型化、高性能化ばかりでなく様々な電子機器を生み、世界の人々の生活に貢献している。キルビー氏がICのアイデアを思いついたのは、1人出勤していた58年の夏休み、と伝えられている。
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