Letters from the World
テレコムカウボーイ、懲役25年
2005/07/25 15:37
週刊BCN 2005年07月25日vol.1098掲載
80年代前半、小さな長距離電話会社として始まった同社は買収に買収を重ね、米国の通信電話業界に帝国を築いた。創業時からの生え抜き社長エバーズ氏は、南部独特の強気の経営スタイルで“テレコムカウボーイ”と畏怖された。仮に素行良く刑期を勤め上げたとして釈放は84歳。バスケットボールの元コーチといっても今は心臓に持病を持つシニアだ。はたして元気な姿で社会復帰できるかどうか。判決を言い渡された瞬間にはさすがの彼もテーブルに泣き伏したという。
同社の詐欺事件は米史上最悪。不正操作は主に諸経費を長期投資と偽って資産を水増しする手法で行った。02年に発覚するなり1株60ドルだった同社株は紙屑同然となり、多くの人の人生を狂わせた。
弁護側は不正会計が直接の売り要因でなかったと主張。169通もの書簡でエバーズの慈善活動の実績と病状を訴えたが無駄だった。
米史上最大の被害額を出し、同年夏に経営破綻した同社は、倒産負債額もこれまた米史上最高。エバーズ元CEOは豪邸を売り払って、再就職不能となった元社員たちへの償いに充てる。クリスティ夫人の手元に残るのはつましい家と5万ドルのわずかな蓄えだけ。「正義は下された」。法廷に詰めかけた投資家や元社員の多くは厳しい判決に溜飲を下し、歓迎した。
110億ドルなんてどうしたら誤魔化せるんだろう。うまく想像できない方はぜひ1度エバーズ元CEOを見ておくべきだろう。(米サンフランシスコ発:ライター 市村佐登美)
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