Letters from the World

現金とカード

2005/07/18 15:37

週刊BCN 2005年07月18日vol.1097掲載

 お店に立派なスーツを着たビジネスマン風の客が入ってくる。商品を見つけて支払いをする時に、財布から、大量の札束が出てくる、クレジットカードが出てくる。

 あなたはそのお客と顔なじみではない。とではどちらを信用するだろうか。

 これは日本と米国で答えが違う。日本ではいうまでもなく現金を持った客を信用する。しかし、米国では現金に対する信頼は非常に低い。

 まず、現金は誰が所有者かわからない。当たり前だが、現金は匿名で物を購入することができる。支払っている人が誰かという履歴は残らない。今現金で支払おうとする人は、隣町で強盗して盗んだ現金を使おうとしているのかもしれないのである。

 例えば、町で違法ドラッグを買うという行為をしている人が、クレジットカードで支払う人はいない。

 また、米国では個人が3000ドル以上の預金を現金で行うと、銀行は米国税局に預金を行った人を報告する義務がある。これは現金が脱税の手段として使われる可能性が多いということが背景にある。また、商品を販売する側も、現金で購入する相手には気をつけるようにしている。その良い例が、ホテルのチェックイン。現金をいくら持っていても、米国のホテルでは、カードを見せないと電話すらすることはできない。

 さらに、ネ ットでビジネスをしている会社にとって、現金は最悪の支払い方法だ。現金はネットで送金することはできない。オンラインで買い物ができるのはカード。もちろん代引きという方法はあるが、商品を届けて、代金回収をする手間がかかる。また、相手が商品を受け取らなかったら、送料が無駄になる。

 このようなことを総合的に考えると、やはり米国では現金が使用されることは難しい。

 しかし、本当は現金がなくなることは怖いことでもある。すべてがカードになったら、あなたがいつ、どこで、何を買ったかが、すべてどこかに記録されるのである。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング 内倉憲一)
  • 1