Letters from the World

ジャストインタイムとBTO

2005/06/13 15:37

週刊BCN 2005年06月13日vol.1092掲載

 お客様から注文されてから商品を生産して納品する。しかも納品する商品はそのお客様の要望に合わせた。これをBTO(注文生産方式)という。しかし、これはオプションが多くなればなるほど多くのパーツを在庫として持たなければならない。そこで、自社では在庫しないで、必要なとき必要な分だけを準備する。これがジャストインタイムと呼ばれる在庫管理だ。また、このようなコストを軽減して不良在庫・流通在庫を減らせる動きをKAIZEN(改善)と呼んでいる。

 このモデル企業となったのがトヨタ自動車だ。自動車業界だけではなく、コンピュータ業界の多くの企業がKAIZENを考えている。しかし、このジャストインタイムとBTOに問題がないわけではない。

 いつもデルから購入するパソコンをヒューレット・パッカード(HP)からにしてみた。デスクトップ1台とノートパソコン1台だ。すると、デスクトップで頼んだ機種の1パーツが在庫切れで、そのためにパソコンを受け取るまでになんと4週間もかかってしまった。ジャストインタイムどころではない。

 デルの場合は、ないパーツをアップグレードしてでも出荷する。もちろん断ってだが。また、デルは決してBTOをしているようには見えない。可能性があるのはソフトウェアとRAMのインストール。それ以外はすべて製品で保管しているように見える。それだけ納品が早いからだ。ジャストインタイムとBTOを叫ぶHPだが、4週間も納品にかかったのでは、誰も買わなくなる。

 話をトヨタ自動車に戻そう。トヨタ自動車はKAIZENで世界から注目されているが、トヨタ自動車は米国ではジャストインタイムとBTOは行っていない。トヨタ自動車のディーラーには生産された車が何十台、何百台と並んでいる。一番商品が売れる米国でトヨタはジャストインタイムとBTOを行っていないのだ。そのまねをして納期を遅らせるHP。

 これではデルには一生勝てない。それを理解しなければ米国では商売はできない。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング 内倉憲一)
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