旅の蜃気楼

銭湯がギャラリーに

2005/06/06 15:38

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

▼葛飾北斎や安藤広重の影響を受けたジュリアン・オピーの作品を見た。イギリスのアーティストだ。残念ながら、それをお目当てに出かけるほどの芸術的な知識はなかった。雨模様の谷中を散策するのに足を向けた。根津からお寺の並ぶ細い曲がりくねった坂を上り切る。そのあたりに銭湯の煙突が見える。正面に回る。そこは、立派な屋根瓦のあるお風呂屋さんで、200年を誇る「柏湯」さんだ。

▼風呂桶をもって、「こんにちは」といった気分になる。が、今は「SCAI THE BATHHOUSE」という名のギャラリーだ。入ってみた。なるほど天井の高さといい、天窓から入る自然光といい、お湯のはねる音が聞こえそうだ。真っ白に塗られた壁を見回す。「おや、」。20インチほどのスクリーンが光っている。「なんと」。ビキニ姿の女性が画面のなかでモンローウオークを繰り返しているではないか。そうか、なるほど、今でもここは、銭湯だ。

▼そのスクリーンはパソコン内蔵型のLCD壁掛けタイプで、サムスン電子製だ。このモンローウオークを自宅で美術鑑賞するには機器込みで500万円。「えっ」。ここは銭湯だから、「湯う、ばっかり」かな?(谷中発 笠間直)
  • 1