Letters from the World

有名人のドメイン名

2005/05/16 15:37

週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載

 ローマ法王の死去と、それにともなう新法王の就任で、ネット上でもいくつか賑やかな出来事が続いている。まずオークション大手のイーベイに新旧法王関連の品が大量に出品され始めた。特に新法王関連商品は数が多く、サイン入りの写真や彼の著書などは大人気。なかには肖像入りのマグカップまでが出品されている。

 もちろんドメインも取得されている。米在住のあるエンジニアが取得したドメインには新法王の正式発表後にアクセスが殺到したという。彼は事前にいくつかの候補をすべて取得していたという。もっとも、その行為には非難の声もあがっている。

 近年は、企業や有名人のドメイン名は、訴訟になった場合は無償での返却を命じる判決も多く、以前のように高値で取り引きされることは少ない。しかしこのようなドメイン名はアクセス数が見込めることから、依然として高値で取り引きされている。今回のドメインもポルノサイト業者などへの売却などが懸念されている。

 その昔、インターネット創世期に、ある学生が自分の名前のドメインを取ろうとした。しかし彼は自分の名前が某大手企業名と同じだったことから、律儀にもわざわざその企業に電話を入れ、ドメインを個人で取得して良いかどうかを確認したという。当時の企業の担当者はインターネットに関する知識が十分ではなく、彼に許可を与えてしまった。

 その後、インターネット上のドメインの重要性に気がついたその企業は、改めて彼にドメインの買い取りを申し出た。しかし彼は売却には同意せず、ドメインの無償提供の条件に地元のすべての学校へのパソコンの支給を企業側に要望した。もちろん企業側はこれに同意。その地域は全米でも早くからパソコン教育が行き届くようになったという。

 今の時代のIT業界にはこんな心意気のある人物は出てこないのだろうか。個人の利益ではなく地域の発展に寄与したその彼の名はマクドナルド君という。(米ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)
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