北斗七星

北斗七星 2005年1月24日付 Vol.1073

2005/01/24 15:38

週刊BCN 2005年01月24日vol.1073掲載

▼ある経営者が「いくら優秀でも、チームワークに貢献しない人間は、その能力を評価できない」と口にした時、取材中だが「えっ」と聞き返してしまった。その経営者は外国人で、成果主義について高い見識を持ち、自分の会社においてリストラの大ナタを振るった当人だったからだ。

▼彼の言い分によると、一定レベルの能力を持つのは当然で、そこに達していなければ、本人の幸福のために辞めていただく。しかし、レベルをクリアすると、次に求められるのはチームプレーのできる人だ。できない人は、本人の幸福のために他所で能力を発揮してくださいということになる。

▼青色LEDの発明対価を巡る訴訟は、会社が総計8億4000万円を支払うという内容で和解した。昨年の1審判決では、会社に200億円の支払いを命じた。ある大手電機メーカートップは「(1審判決には)驚愕したが、和解は極めて喜ばしい」とわが身に置き換えて感想を述べた。

▼発明者本人は不満のようだが、今回の事例は金額の問題でないように思う。ここ数年の経営環境の悪化への対応も含め、安易に成果主義に解決の道を探ろうとした企業と内容を理解しないままに成果主義を受け入れている従業員。労働や雇用、その契約の本質まで考えなかったことへの警鐘だ。ようやく企業も知財に関する報酬体系を見直し始めた。あらためて制度の問題としてとらえていくべきだろう。個人的には、今回の発明者に「お気の毒でした」と声をかけたいのだが。
  • 1