Letters from the World

ブッシュ続投とベルの春

2004/12/06 15:37

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

 前回を凌ぐ厳しい選挙を勝ち抜いて、ブッシュ大統領の続投が決まった。筆者としては民主党のケリー候補に勝ってほしかったが、通信業界の雄、ベル会社にとって、続投は「ありがたい結果」となった。というのも、ベライゾン・コミュニケーションズ、SBCコミュニケーションズ、ベルサウスのベル3社は、今回もブッシュ候補を強力に支援したからだ。実際、1期目のブッシュ政権では、ベル各社が大幅な規制緩和を受け、「我が世の春」を満喫した。どうやら、この春はあと4年続きそうだ。

 振り返ればこの4年間、米国の通信業界には大きな変化が訪れた。1990年代、がんじがらめの規制で身動きの取れないベルをよそ目に、長距離電話会社や新興通信事業者は急成長を続けた。しかし、ブッシュ大統領の登場で、状況は逆転した。例えば、AT&T、スプリント、MCIの長距離大手3社は、最近の決算(第3四半期)で3700億円から1兆2000億円と言う、巨大なライトオフ(評価損)を計上した。これは長距離電話設備が不良採算化したからだ。この長距離(音声)市場の衰退は、ブッシュ時代の産物だ。携帯は全米同一料金が当たり前。それに加えて、長距離市場に参入したベル各社が、市内・市外をまとめる「北米掛け放題」を展開した。おかげで長距離サービスだけを買う客はいなくなり、AT&T衰退の原因となった。

 いま、米国は市内・市外という距離別サービス時代が終わり「携帯・固定網」という時代に踏み込もうとしている。もちろん固定網は、DSLやFTTHといったデジタル回線で、音声通話はその機能の1つに過ぎない。

 ブッシュ政権は、こうした改革を更に進めるだろう。では、その行く手にはなにが待っているのか。それはたぶん、放送と通信の垣根を取り除いて「より広い競争市場」を創造することだろう。第2期ブッシュ政権がどこまでこの目標に近づけるかはわからないが、日本の行政当局やNTTなどの大手通信事業者は、米国の動きを追いかけることに奔走することになるだろう。

 果たしてブッシュ大統領とベルの春は、いつまで続くのだろうか。(米サンフランシスコ発:ジャーナリスト 小池良次)
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