Letters from the World

台湾の鬼月には

2004/09/20 15:37

週刊BCN 2004年09月20日vol.1056掲載

 台湾の中元とは、道教の三大習俗の1つであり、人間贖罪のお祭りとなっている。日本の中元とは、ニュアンスが相当異なる。毎年旧暦の7月が鬼月と呼ばれる期間であり、その中心の7月15日が中元となる。今年の新暦では8月16日から9月13日までがその鬼月の時期にあたる。当然新暦と旧暦の違いにより、毎年ごとに新暦の鬼月の時期は変わる。台湾でもこの時期は、まだ残暑が厳しいが、今年は台風が多く気候はきわめて不安定であった。

 会社や家庭でも道教式の礼拝(中国語では拝拝と書き、パイパイと呼ぶ)をあげたり、神様にお供えものを捧げたりする。日本の場合、先祖が戻ってくるため、先祖と一緒に過ごせるという前向きの雰囲気とは違い、多少の恐れを含めたニュアンスがある。文字通り鬼(幽霊)が出る時期であるとされ、控えめな生活をしないと、鬼にさらわれたり、のろわれたりすると信じられている。最近、9999汎亜人力銀行という台湾の求人情報サービス会社の行ったサラリーマンに対する調査でも、サラリーマンの66%は家庭でお祈りをすると回答した。幽霊の存在を信じていると回答したのは48%だった。

 58%の人が、この時期に手術は避けたいとし、葬式に参加しない(51%)、不動産は買わない(47%)、結婚は避ける(37%)、深夜に口笛を吹かない(33%)、川などで泳がない(27%)、飛行機に乗らない(12%)、と続く。台湾の人々は信仰深いと云える。旅行業界はこのオフシーズンをなんとか打開したいと、会社向けに海外への慰安旅行の企画を格安にオファーするなど積極的なアプローチを図る業者も増えてきた。しかし、この時期は、台風が多い季節でもあるので、旅行業界も計画達成が難しい。今年の台湾は鬼よりも台風が襲ってきたと云えるくらい台風が多かった。台風による水害もひどく、一時は、台北の下町が台湾のベニスのようになってしまった。(台湾・台北発:アコードインターナショナル 原 真)
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