北斗七星

北斗七星 2004年8月23日付 Vol.1052

2004/08/23 15:38

週刊BCN 2004年08月23日vol.1052掲載

▼「新生体操」というより、「新生日本」の復活だ──。アテネ五輪で男子体操が団体総合で28年ぶりの金メダル獲得を、ある体操関係者はこう評した。かつて、小回りが利き、技をそつなく繋げる体操競技は、小柄な日本人向きで、“お家芸”だった。しかし、ルールが変更され、ダイナミックさや演技美が求められ、元々不足ぎみの精神力から高度な技のミスは目立ち、低迷期に入る。だが今回、美も精神力も身に付け復活を果たしたのだ。

▼これまでの五輪での低迷は、国際舞台に弱く、自己主張に乏しく、精神力が足りない日本人を見直すきっかけになった。学校教育の指針である学習指導要領でも15年ほど前から、「国際化教育」、「心の教育」が重視された。当時の文部省官僚は、「実力がありながら敗退する日本選手を見て、苦々しく思っていた」と、五輪も国内の学校教育を見直す契機になったと指摘する。

▼それだけに、「男子体操の優勝は、新生日本人が国際社会で生きる人間として成長した証でもあった」と、前出の体操関係者は語る。前回のシドニー五輪から、規定演技と自由演技で競うところを自由演技のみにルール変更された。黄金時代の体操日本は、規定演技で稼ぎ、苦手な自由演技で確実に得点を重ね、逃げ切る手法だった。

▼今回は1種目3人全員にミスが許されない状態。そこで勝った意義は大きく、「新生日本」を全世界に示す好機となった。米紙に「チョウのようだった」と称賛された、こうした若い世代が創り出す今後の日本に期待大だ。
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