ワインの世界を訪ねて
<ワインの世界を訪ねて>7.ワイングラス
2004/06/21 15:27
週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載
世界のレストランで一番多く使われているこのオーストリアのグラスメーカーは、グラスの形と人間の味覚の関係に着目し機能的なグラスを設計している。
人間の舌はどの部分も均一に味覚を感じるのでなく、舌先が甘み、サイドが酸味、その外側の縁が塩味、奥が苦みという「味覚地図」が形成されている。だから舌のどの部分に液体が到達するかにより、味覚の感じ方が違う。
たとえば口が広がっているグラスだと舌のサイドに液体が最初に到達するから酸味をより意識しやすくなり、縁が反り返ったグラスだと飲む側は首を後ろにそらなければならないので、舌先でまず甘みを感じすぐにサイド、奥へと到達する。
リーデルのグラスは、特定のぶどう品種ごとの、甘みや酸味、タンニン(渋味)の要素から構成されるワインの魅力を最大限に引き出すように、グラスのボウル部分の大きさ、ステムの長さ、口の直径、縁の反り具合などのポイントを細かく検証し、グラスをデザイン。そのアイテム数は100を越える。
ブルゴーニュ用のグラスはブルゴーニュのワインを、ボルドー用のグラスはボルドーのワインをおいしく飲ませてくれる。
しかし産地や品種ごとに全種類をそろえていたら、ものすごい数になり、ただでさえ狭いわが家のキッチンがグラスだらけになってしまうから、私は赤はボルドー、白はシャブリを4客ぐらいずつ揃えているが、自分用にブルゴーニュ・グランクリュとリースリングをもち、時々楽しんでいる。意外に白のフルボディのタイプがボルドーで飲むとおいしかったという経験もあるので、各自の好みに合わせて選ぶのもよいかも。
ただ問題なのは扱いがけっこう大変なこと。ブルゴーニュ・グランクリュなんて、ボウル部分が小さな金魚鉢ぐらいあるし、口当たりを考えて薄く造られているから、洗う時にパリンと割れて1万円を超える損害に地団駄踏んだことも。しかも長く使っていると、まるで疲労骨折のようにステムが折れたりすることもあった。とにかく酔っぱらっている時には洗わないこと。
それがここ数年のリーデルグラスとのおつきあいからの教訓だ。
- 1