旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->61.台湾の旅-(3)日月潭

2004/06/07 15:27

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

 1999年4月、台中から車で1時間半、日月潭についた。2000メートル級の山々に囲まれた、海抜748メートル、面積11.7平方キロ、水深30メートルの天然の湖で、阿里山と並ぶ中部台湾屈指の景勝地である。特に霧が立ちこめる朝夕が幻想的で美しい。

 木造建築のホテル哲園は落ち着いた風格があり、いかにも日本人好みであった。湖上に突き出たホテルの船着場から貸切りの遊覧船に乗り、湖をゆっくり一周した。湖岸には旅館街がなく、湖上を走るモーターボートもない。緑溢れる大自然の景観を心ゆくまで楽しんだ。有名観光地にしては人影少ない街の一画で、高砂族の踊りを見物した後、ホテルの船着場でホテルの夜景を楽しみながら時を過ごした。

 ここには日本統治時代に造られた日月潭水力発電所がある。1934年(昭和9年)竣工で、台湾の水力発電の主流として当時はもちろん、現在も稼働し続けている。この発電所建設によって台湾の産業近代化が大きく前進することになった。八田與一は珊瑚潭建設に続いて、この事業にも関与した。

 湖を見下ろす高台にある孔子と関羽を祭った文武廟に立ち寄った。派手な建物と左右一対の大きな赤獅子が目を引く。ここには大型バスが連なり、多数の観光客で賑わっていた。

 帰路、霧社に向かう分岐点で停車し、「霧社事件」の悲劇を想起し、万感の想いをこめて写真を撮る。

 この年の10月に、この辺りを震源地にした台湾大地震が起こり、ホテル哲園も倒壊した。僅か半年程の差で難を免れたことになり、どうしても他人事と思えず、心ばかりの義捐金を送った。この地震では日本人救助隊の活躍が高く評価された。
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