Letters from the World

AOLとグーグル

2004/04/26 15:37

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 アメリカ・オンラインの販促ディスクを見かけなくなって久しくなる。インターネット・ブームだった頃は、1週間に2枚か3枚は販促キットが送られてきたものだが、最近はテレビ広告で時々AOLを見かけるだけ。すっかり影が薄くなってしまった。調べてみると、AOLの会員数は去年末で2430万人。2番手のMSNやコムキャストなどは1000万人を下回っているので、いまだトップランナーだが、昨年は200万人がAOLをやめた。しかも、ブロードバンド会員は300万人で低迷だ。

 3年前、大手メディア・グループのタイムワーナーを買収し、社名もAOLタイムワーナーと変わったが、その後AOL創業者のスティーブ・ケイス会長やタイムワーナーを育てたジェラルド・レビン会長がいなくなると、タイムワーナー経営陣とAOL経営陣の激しい権力争いが始まった。そして業績が悪化したAOL幹部たちは次々と辞め、社名もタイムワーナーになった。

 確かに、権力争いが続いていた過去数年、AOL部門は不正会計問題やら従業員の着服など次々と問題が表面化した。実際、ニュースを読んで「AOL社内はひどいモラルハザードだな」と感じたものだ。一方、いま一番注目を集めているのがグーグルだ。私の自宅から小一時間走ったところに、小さなオフィスを構えている同社だが、いよいよこの秋には株式上場を予定している。

 いまは週1回、従業員の多くが集まる会議で、主要な経営項目は議論され、決定するという。1990年代の古き良きインターネット文化をいまだ継承しているわけだ。しかし、世界最大の検索エンジンとして、いま頂点にあるグーグルは、上場すれば1兆5000億から2兆円の市場価値を持つといわれている。そうなれば官僚的な会社組織へと移行することになるだろう。 AOLのような問題に遭遇せず、ヤフーのようなネット企業に成長できるか。それはグーグルにとって大きな試練だろう。(米サンフランシスコ発:ITジャーナリスト 小池良次)
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