ソウルの街角から

<ソウルの街角から>29(最終回).まだまだ遠いマイホーム

2004/04/26 19:47

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 韓国ではみんなマンションに住みたがる。一戸建てというと100坪以上の広い庭に警備員付き豪邸か、今にでも崩れ落ちそうな古い家を想像してしまう。防犯と手入れが大変ということで、庭付きよりは広く情報化の整ったマンションが好きなのだ。

 ソウルを訪れた人なら立ち並ぶ高層マンションを目にしたはずだが、そういうマンションに自分の家を持ってこそ、やっと落ち着いた家庭を築いたと認められる。

 毎月家賃を払う概念は韓国にはあまりなく、売値の60-80%ほどを保証金として大家に渡し、その利子を家賃にして家を出る際に保証金をそのまま返してもらう「チョンセ(傳貰)」という制度がある。ハングル辞書にも「外国では類を見ない韓国固有の方式」と記載されているほど珍しい制度だ。

 日本のゼロ金利から考えるとただ当然ではないかとびっくりされそうだが、韓国の利子は低くなってもまだ4%台を維持している。1998年IMF危機の際には20%、99年までも10%近かったので、利子で十分生活できたのだ。

 大家さんは、まとまったお金を貯金するなり、株に投資するなり資産を増やし、その代わりに家を貸してあげるようなものだ。

 韓国は、まだ不動産が値上がりを続けているので投資目的に家を買う人も多く、そのため頻繁に引っ越す。「チョンセ」は2年契約が多いので、持ち家でない限り最低2年に1度は引っ越しを経験する。だから、主婦はみんな早く自分の家を持ちたい!と願うのだ。

 ソウルの江南地区のマンションは、33坪で6億ウォン(約6000万円)を超える物件がほとんどで、サラリーマンの正直な給料では何十年貯金しても買えない。それじゃどうするのか。不動産の値上がりのタイミングに合わせ、引っ越しながら少しずつ広いマンションに移動していくのだ。

 新規分譲も必ず値上がりするので確実に金を産む卵として人気が高い。申請日にはモデルハウス周辺の交通が麻痺するほどの長蛇の列。1日20万ウォンで代わりに並んであげるアルバイトまで登場している。今では、いくつかのマンションはインターネットからも分譲申請できるようになった。

 そして、私もついに三星建設の新規分譲を申請してみた。2年間積み立てるとソウル市が管理する新規分譲マンションを申請できる権利が与えられる「住宅請約預金」が満期になり、優先順位になったのでやってみたが倍率は427:1。発表は4月22日。気になる方はメールください(笑)。

 コラムは今回で終わりですが、いつかまたお会いできる日まで、ごきげんよう!(メールはkjibc@kjibc.org)。
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