Letters from the World

駐留米軍の通信環境

2004/03/29 15:37

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 イラク戦争の開戦から1年が経った。すでに終戦宣言が出ているにもかかわらず、サンフランシスコでは、今もあちこちで戦争反対集会が開催されている。いっこうに収まらないイラク情勢に、米国市民は苛立ちをつのらせているが、戦争の影響を受けているのは彼らばかりではない。

 通信業界も、戦争には深くかかわっている。たとえば、衛星を使ったブロードバンドサービスのスカイフレームは、昨年秋、1通の電子メールをバグダットから受け取った。現地に駐留する米軍兵士から、同社のインターネットを無料で使いたいという嘆願だ。イラクの通信事情は悪く、一般兵士はなかなか家族や恋人に電話もできない。そこで、スカイフレームの提供するIP電話を使って家族と話せないかという内容だ。メールを受け取った同社は急遽、電話45本分のサービスを提供した。

 こうした兵士の呼びかけに応じているのは同社だけではない。IP電話ベンチャーのボナージや無線機器のモトローラ、パシフィック・ワイヤレスなどが、設備やサービスを一般兵士に無料で提供しており、その総額は既に20万ドルを越えているそうだ。それでも兵士が利用できる電話は不足しており、特にサンクスギビング(収穫感謝祭)からクリスマスにかけてはひどかっという。

 スカイフレームの例は氷山の一角に過ぎず、通信業界がサービスや設備を提供することは、1990年代の湾岸戦争よりも多くなっている。とはいえ、この程度の負担は通信事業者にとって当たり前かもしれない。通信環境の改善は、米軍には大きな課題となっており、現在は次世代通信網の整備を進めている。

 昨年末に発表された通信設備の調達は総額2兆円を越え、世界最速の640GbpsIPルータなど、その内容は光通信の最先端技術を競うものだ。おかげで通信大手の売り上げは大きく伸びた。しかし、ネットワークの完成は数年後。それまでは、地道に設備やサービスを兵士たちに提供することになる。(米サンフランシスコ発:ITジャーナリスト 小池良次)
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