Letters from the World

インド発展の過程

2004/03/22 15:37

週刊BCN 2004年03月22日vol.1032掲載

 最近インドを訪問して感じることは、インドらしい刺激が少なくなってきたということだ。自分自身が環境に順応したせいももちろんある。しかし、インドが豊かになり、また国際的になったきたことも主な理由であろう。とくにソフトウェア産業で成り立っているようなバンガロールでは特にそう感じる。以前は、日本製のカメラ、時計、カセットレコーダーなどを持っているだけで、それはいくらするのか、といった質問攻めにあった。外国人自体も非常に珍しがられた。最近では、バンガロールでも日本人や韓国人を多く見かけるので、あまり珍しがられない。

 輸入関税も大幅に下がり、海外からの直接投資による海外メーカーの現地生産も増えたため、消費材や、DVD、フラットパネルのテレビなども溢れている。心配なのは、電力不足や廃棄物の急増など、どこの発展途上国でも見られる問題点の浮上である。現にバンガロールでは、定期的な電力の供給制限も行われている。私が初めて訪れた20年前のバンガロールは英国植民地時代の英国人の避暑地のままであろうような、快適な気候と美観を備えていた。当時は夏でもエアコンはいらなかった。今では、人口や車の急増、特にエアコンの急速な普及で、平均気温がかなり上がったらしい。真夏はエアコンがないと熟睡できない。ラッシュ時になると前が見えなくなるくらいにスモッグが立ちこめる。

 国の発展の過程では避けられない問題かもしれないが、今後ますますインフラも整備されるにつれ、このような歪みは避けられまい。中国も同様の問題を抱えているが、大きく違うことは、中国は消費も美徳であり、贅沢は金持ちの特権のように位置づけられているが、インドではまだまだ、質素な生活が美徳であり、金儲け自体は最優先ではないということだ。従って中国でみられるほどの極端な道徳観や意識の変化には及んでいないように思われる。(インド・バンガロール発:アコードインターナショナル 原 真)
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