Letters from the World

御難続きのディズニー

2004/03/01 15:37

週刊BCN 2004年03月01日vol.1029掲載

 このところミッキーマウス王国が、連日ニュースを騒がせている。ケーブルテレビの最大手、コムキャストがディズニーに敵対買収を仕掛けたからだ。 コムキャストは、巨人AT&Tとの激しい買収合戦に一度は負けたが、その数年後にAT&Tブロードバンドに敵対買収を仕掛けて成功し、復讐を果たした強者だ。 そのコムキャストが、御難続きのディズニーに敵対買収をしかけたわけだから、メディアも大衆も好奇のまなざしで成りゆきをみている。

 ところで、日本ではディズニーが創造性あふれるプロダクション集団と誤解している人が多い。 確かに、創業者ウォルト・ディズニーは稀代のクリエーターだった。しかし、同社はその後、長期低迷という冬の時代を過ごしていた。 そのディズニーを復活させたのが、現在のマイケル・アイズナーCEOを筆頭とする経営陣だ。 彼らは、同社を子供向け総合商社に作り替えた。ピクサー社のトイ・ストーリーに代表されるように、ディスニーの大ヒット作は、優秀なクリエーターを抱えている外部プロダクションが生み出している。

 ディズニーは、こうしたプロダクションに資金を提供し、映画配給やキャラクター販売、テーマパークなどで利益を生み出している。 ディスニーとの契約打ち切りを宣言したピクサー社のスティーブ・ジョブズCEOが徹底的にののしったように、その契約方法や経営管理の厳しさは業界でも有名だ。とはいえ、証券筋には現在のディズニーは評判がよい。創造性を捨て、利益をしゃにむに追求する同社は投資家にとっては有り難い存在だからだ。ともあれ、我が家は子供達がミッキーマウス嫌いということもあって、ディズニー無縁族。ディズニーが明日なくなっても一向に構わないため、今回のドタバタ劇を大衆の一員として楽しんでいる。(米サンフランシスコ発:ITジャーナリスト 小池良次)
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