Letters from the World

消費者に必要な情報を

2004/01/19 15:37

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 米国でも日本でも同じだが、何かヒットする製品ができると、すぐにまねをした製品が世の中に出る。そして、デフレ状態が生まれる。そして、商品の価格が下がるのだ。これは単純な悪循環だ。そのサイクルをストップしない限り、新商品の研究開発に投資する会社はなくなる。研究開発をしないから、高い値段を取れる製品が作り出せない。そうなると製造原価を安くするという考えが生まれ、生産業務の多くは人件費の安い海外に移行する。その結果、自国内に仕事を失う人が多くなり、市場に購買力がなくなり破壊される。そして、商品はますます売れなくなる。

 自分の国で生産して、高い値段でも売れる商品を作ることは困難だ。しかし、それは不可能なことではない。それは、製品の魅力である場合もあるかもしれないが、私は多くの場合、営業の力だと信じている。こんな話を最近聞いた。魚屋に一尾130円のサンマと200円のサンマがあった。見た限り大きさも同じだ。これを見る消費者の多くは、「なぜだろう」とは思っても、何も聞かずに130円のサンマを買う。それは言うまでもなく安いからだ。

 これは、今IT業界で起こっている価格競争に似ている。要するに安ければよいという感覚なのだ。しかし、ここで魚屋が、130円のサンマと200円のサンマはここが違いますということを明記したとしよう。例えば、130円のサンマは海外からの冷凍輸入で、200円のサンマは北海道産で油がのっているといった具合だ。そうなると、消費者の動向に差が出てくる。もちろん安いものを買いたいという人には130円のサンマ以外は売れないが、200円のサンマを買う人も出てくるだろう。これをIT業界にあてはめて考えてみたらどうだろう。ITに関連した知識のある人には当たり前の情報も、消費者にとっては商品を選択する場合に必要な情報である。そのようなことがあるということを覚えておきたい。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング  内倉憲一)
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