ソウルの街角から
<ソウルの街角から>14.法事の話
2004/01/12 19:47
週刊BCN 2004年01月12日vol.1022掲載
1回の法事に後片付けを含め2泊3日はかかるので、お嫁さんは大変だ。先祖の法事になると親族一同のお嫁さんが、後継ぎ長男(長男の長男)の家に集まり準備を始める。魚の白身、きのこ、れんこん、さつまいもなどを種類別に小麦粉をまぶして卵をつけて焼き、牛肉と豚肉のかたまりを味付けせず焼く。鶏やたこを姿そのまま蒸したものや数々の果物、干し物などを、とにかく高く高く専用のお皿に積み上げる。
全部で20種類以上の料理を作り、1つずつ下準備をして焼いて形を整えてと、料理の準備だけで2日はかかる。料理の種類や並べる位置は決まっているが、地域によって微妙に違う。海が近いところでは魚介類が多く、内陸は肉、山間地域は山菜が多い。
法事は夜9-12時の間に始まる。男性が先に「ジョル」(全身を屈める礼)をし、法酒(清酒)を捧げ先祖がおいしく料理を頂くようお箸を動かしたり、汁ものを取り替えたりする。最後にもう1度「ジョル」をして終わる。
その後は料理をみんな食べる「飲福」。ナムルのビビンバに豆腐と牛肉の汁物をメインに法事料理をつまむ。法事の食べ物は近所の人にも配ったりするが、その家の独特な風習が覗けるので面白い。
ソウルからバスで4時間30分の慶尚北道「安東(アンドン)」は、今でも両班(朝鮮時代の貴族)の町として保存されている。数百年前にタイムスリップしたように昔の家がそのまま残っていて、国の許可なしでは家の修理も勝手に出来ない保存地域だ。そこでは28代目や32代目の子孫が普通に生活している。
イギリスのエリザベス女王も訪れた安東の特産物は法事料理だ。専門食堂もいくつかあり、商品として作られた「偽法事料理」を食べに全国から人が集まる。オンドル部屋で法事料理を食べると、昔の両班になった気分を味わえる。
インスタントなものが増え、インターネットで何でもやってしまうイメージが強い韓国だが、古い伝統だってちゃんと守られている。筆者も先週法事のため2泊3日田舎に行ってきた(この話をすると必ず周りから「うそ!まさか!」と言われるのだが)。
伝統は大事なのだが、朝から晩まで料理に掃除に皿洗いに追われるお嫁さんを尻目に、飲んだりおしゃべりしたり楽しそうにしている旦那さん達は憎い。
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