北斗七星

北斗七星 2003年12月8日付 Vol.1018

2003/12/08 15:38

週刊BCN 2003年12月08日vol.1018掲載

▼九州から東京までの帰りに、寝台特急を利用してみた。飛行機ならば1時間半、新幹線でも5時間程度の行程に約16時間かかる。内田百 の「阿房列車」になぞらえて言えば、急いで帰る用事もないことだし、わざわざ時間のかかる交通手段を選んだことになる。かつては「走るホテル」と言われ、山陽新幹線開通以前は寝台特急が出張や旅行の主要な足になっていた時代もある。そんな豪華列車の面影も今では薄く、サービスも低下し食堂車は10年前から営業を止めている。

▼来年3月の新八代―西鹿児島間の部分開業を目指して、九州新幹線の工事が急ピッチで進んでいる。営業運転を想定した時速260キロの運転試験も始まった。現在、約4時間かかる博多―西鹿児島間が新幹線の開業により半分に短縮される。新八代駅が田畑の中にあろうと、西鹿児島駅の地下街工事が開業に間に合わないのが確実になろうとも、移動時間が短縮されるのは地域経済にもプラスになる、らしい。九州新幹線の開業で、九州―東京間の寝台特急の寿命はさらに短くなりそうだ。

▼交通手段の発達で日本列島は、どんどん狭くなる。今時のビジネスのキーワードは、スピードアップによる競争力のアップ。よほど時間があって、気楽な旅を楽しむのでなければ、寝台列車は時間の無駄。普通のビジネス感覚で言えば、九州からの10数時間は決して実用的とはいえなくなった。阿房列車を楽しめた百 先生の時代も確実に遠のいている。
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