ソウルの街角から
<ソウルの街角から>5.アジュンマが行く!
2003/11/03 19:47
週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載
ずうずうしい、うるさい、電車の中でちょっとした隙間にもお尻をぐいぐい押し込み、セールに弱いのは世界共通だが、制服姿でたばこを吸う高校生を注意したり、物乞いにお金をめぐんだり、事故現場のボランティア活動には誰よりも先にかけつける正義の味方でもある。
私もアジュンマだが、生まれて初めて「アジュンマ」と呼ばれた日のことは忘れられない。
夕方のスーパーで魚コーナーのお兄さんが、結婚して間もない私に「アジュンマ! 今日はサバがいいよ!」とさけんだのである。ショック!「アジュンマだって…」と独り言を言いながら途方に暮れてしまった。今ではもう平気だけど。
韓国では結婚して子供を生んでもスタイル抜群で、全くアジュンマに見えない女性をミッシー族とも言う。自分自身をミッシーと信じている女性も多く、「絶対アジュンマとは呼ばせないわよ」という貫禄からか、逆に20代のアガシ(お嬢さん)からは怖がられている。
この頃の若いアジュンマは家事や子供だけでなく、政治にとても関心がある。TVの討論番組には必ず電話で視聴者の意見を聞くコーナーがあるが、一番現実的でまともな意見を出すのがアジュンマ達だ。韓国ではパネルにアジュンマを参加させるべきとの声も高い。
大学進学率が60%を超える韓国では、名門大出身で誰もが羨む職に就きながらも、子供の教育のためにキャリアを諦める女性がまだ多い。子供のためなら何でもするのが韓国のアジュンマだが、自分の才能をどうしても諦めきれず、ネットを利用して家にいながら社会に向けて自分の存在をアピールしている。
日本でもたくさん登場した女性ポータルサイトで満足せず、オンライン新聞に投稿したり、同好会を作ったり、個人のホームページで小説を連載したり、アジュンマのずうずうしさがリーダーシップに生まれ変わっている。
韓国では結婚しても苗字は変わらない。旦那さんを主人とも言わない。でも、儒教の考えが強く残っているので、女性の権力は旦那さんか息子の社会的地位から生まれる。今時、息子が生まれるまで3人も4人も子供を産む人がいるのも事実だ。この微妙な環境の中で、絶えずアジュンマ達は殻を割って外に飛び出ようと身構えている。大韓民国のアジュンマ達は、今日も何か面白いことはないかと目を光らせている。
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