ソウルの街角から

<ソウルの街角から>4.韓国人はネット廃人

2003/10/27 19:47

週刊BCN 2003年10月27日vol.1012掲載

 韓国のオフィスからは内線電話が消えかけている。電話どころか隣にいる同僚ともインスタントメッセンジャーやメールでやり取りする。なんとも寂しい光景だが、これが日常になっている。この時代にネットが使えない、メールアドレス1つ持っていない、パソコンをさわったこともない、なんて人は本当の意味でのお年寄り、または変人扱いされるかもしれない。それぐらい韓国ではネットが当たり前になっている。韓国では「IT産業」という言葉すら死語になりかけている。全ての産業がIT化しているのに何を「IT産業」と呼べるのか、という意味だ。

 おいしいお店、セール情報、誰かの連絡先、用語調べ、取引先の情報、夕食の支度、出前、「何でもまずネットで」、こういう傾向の人が本当、増えている。私も例外ではない。インターネット歴10年目の私は「ネット中毒」を乗り越え、「ネット廃人」と言われている。

 オンラインゲームやネットに夢中になり、まともな社会生活ができなくなるのは「中毒」、ネットの中で仕事もプライベートの用事もすいすいこなし、活発にネットから新しい何かを生み出そうとがんばるのは「廃人」、韓国のネティズン(ネットユーザー)は海外に比べ「廃人」レベルが非常に多い。

 全国の学校には立派なパソコンルームがあり、宿題もネットで検索するように指定される時がある。街のいたるところに無料で使えるネットカフェがあるので、家庭にネット回線がなくても心配はいらない。

 日本ではネットでカード決済することに抵抗がある人が多いようだが、韓国はコンビニでもカードが使えるカード社会(年間所得額の20%に該当する金額をカードで使うと税金の払い戻しがある)、何か問題が発生した時カード会社や警察がすぐ対処してくれることを経験しているので全くと言っていいほど抵抗がない。

 みんなネットで何かをすることにとても積極的なので、ビジネスもしやすい。手に取って見られないデジタルコンテンツ、例えばアバタ(サイバーキャラクター、ネット上の分身)の着せ替えに月1000円以上使うユーザーは韓国人しかいないかも。映画の試写会もネットで開催しているし、企業と芸能人が一番怖がるのは掲示板に何かを書かれることだ。電話で苦情を言っても通じない場合、みんなネットに集まる。そうするとすぐ返事が来るから不思議なものだ。

 今や韓国を動かすのは「ネット廃人」とも言われている。「ネット廃人」より情報収集が早く積極的に意見を出し合う人種もいない。これからはユビキタス、いつでもどこでも廃人になれる。韓国はまた生まれ変わるだろう。
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