ソウルの街角から

<ソウルの街角から>3.屋台の季節

2003/10/20 19:47

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 週末雨が降ってから寒さが厳しくなった。もう山間部には初雪、屋台のおでんがおいしい季節になった。韓国にもおでんがある。でも日本のようにこんにゃくやだいこん、ちくわといった具はない。おでんの具は1つ。魚の練り物を棒のように丸く引き伸ばして串にさしたものだ。これを醤油とねぎを入れたたれにつけて食べる。とりあえずおでんを手に取り、紙コップに汁を注いで飲みながら、「今日は何を食べようかな~」と迷うのがソウルっ子だ。

 屋台のメニューは数え切れないほど色々ある。最もポピュラーなものは「トッポギ」。人差し指サイズのもちをコチュジャン(とうがらしのペースト)と砂糖、みりんなどで炒めたもので、OLの3時のおやつ定番メニューだ(辛いものをいつも食べているから韓国女性で超肥満な人はいないと聞いたが、本当なのかはわからない)。

 日本の焼き鳥を2倍以上長く太くした鶏肉にコチュジャンとケチャップ、砂糖、しょうゆを煮込んだソースをたっぷり塗った「タッコチ」、黒砂糖、レーズン、くるみを中に入れて油で揚げたもちのような「ホットク」、もち米、春雨、豚の血をソーセージの皮に詰めた「スンデ」、一口サイズの蒸し餃子、衣が分厚い野菜天ぷら「ティギム」、たいやきと同じ「金魚やき」、とうがらしをたっぷり入れたうどんのようなそばに焼酎をストレートで一杯。これが普通の大学生やサラリーマンの「ちょっと寄って行く?」コースだ。

 現在、ソウルだけでも屋台の数は1万6000余り。その内2300余りは企業と呼ばれるほど大型で組織化している。韓国ももちろん屋台の営業許可が必要で、よく取り締りの現場を目撃する。韓国江原道のある街には主人のいない屋台がある。屋台におでんや色々な食べ物は並んでいるが、お勘定をする主人はいない無人店舗。でも、お客さんはちゃんと食べた分お金を払い、自分でラーメンを作って食べたり、次のお客さんのために掃除をしたり、とてもアットホームだ。

 実はここの主人、貧しい人のためにお弁当を作ってあげたり、1人暮らしの老人達を世話してあげたり、四六時中ボランティア活動で忙しく、屋台には1日1時間ほどしか顔を出さない。そのことがテレビで紹介され、今ではすっかり名物屋台になってしまった。

 韓国の冬は雪も多いし、風も強く涙が出るほど寒い日が多い。そんな時、バスから降りて家までひと歩きする前に見かける屋台の灯りは断ち切れない誘惑である。メニューはじっくり煮込んだものが多いので、お腹をこわす心配もない。「太るかな…」と気にしながらもついついあれこれ食べてしまう。ダイエットはまた来年からか。
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