Letters from the World

携帯ゲーム機「ゾディアック」

2003/10/13 15:37

週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載

 米西海岸で行われていたデモ-モバイルという携帯機器展示会で、「ゾディアック」という商品が話題になった。 米タップウェーブが発売するこの製品は、一言で言うと非常に高機能、かつ多機能な携帯用デジタルゲーム機器である。任天堂やソニーが参入を目論むこの市場への意外な先手として、業界内で大きな注目を集めている。ゾディアックの最大の特徴は、パームOSを採用したことだ。PDA(携帯情報端末)用OSとして有名なパームOSをあえてゲーム機器に導入したことで、これまでゲーム機種専用のOSが主流だった業界は大きな変革の時期を迎えたと言える。

 パームOSはユーザーが多く、開発環境も充実しており、多様なツールも揃っている。少数の専門家だけしか知らない独自OSよりも、より高品質な製品を生み出しやすい。ゾディアックの登場は、レクレーション分野のみならず、米国のビジネスシーンでよく見かける専用携帯端末の類も含め、今後各種の携帯端末用OS市場で激しいシェア争いを起こすきっかけになるのではないかと見られている。一方、日本では、自動車や家電などにはトロンOSが多く使用されている。現在のところゲーム機器への使用はまだ主流ではないが、将来の市場としては非常に魅力的であることは言うまでもない。

 機器制御の面でトロンは非常に優秀なOSであり、これに加えてゲーム機器に必須の、人間の操作の反映という面が充実すれば、携帯端末用OSとしてはまさに鬼に金棒だろう。そのトロンはなんとマイクロソフトと提携した。ウィンドウズでパソコン市場を席巻し、ポケットパソコンでPDA市場に参入している同社は、この提携によって更に守備範囲を広げて行きたいのだろう。対するソニーや任天堂はどう迎え撃つのか。そしてノキアや本家パームなどの異業種からの参入組の動向も気になる。しばらくはこの分野から目が離せなくなりそうだ。(ニューヨーク発:フリージャーナリスト 田中秀憲)
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