Letters from the World

次世代ウェブの鍵

2003/09/01 15:37

週刊BCN 2003年09月01日vol.1004掲載

 インターネットに存在するデータを記述するためのメタデータ言語として、W3C(World Wide Web Consotium)よりOWL(Web Ontology Language)が、推薦候補版として発表された。ウェブに氾濫する膨大な情報は、人間であればその内容を効果的に参照して利用することができるが、コンピュータに対しても利用可能な状態で提供されているとは言いがたい。

 例えば、ウェブ上で「名前」と題された情報を発見する場合を考えてみる。その情報が特定の人物の姓名を示すものなのか、または辞書で「名前」という言葉を引いた場合に出てくる言葉の意味を説明しているものなのか、またはこれら以外のものなのかを判別することは、人間にとっては何ら困難ではない。しかしコンピュータに同様の作業をさせるためには、高度な思考回路を実装する必要がある。これを打開するために、データ側から外側(アクセス側)に対する意味インターフェイスを提供しようとするのが、メタデータ言語開発のひとつの目的である。その根幹技術の1つとなる情報標準化言語として、OWLは位置づけられている。

 寡黙かつ硬直したデータに対する力任せな処理を存分に施すことで、市場からの要求に応えるためのデータ処理を拡大再生産してきたコンピュータプログラミングの時代は、今その終焉を迎えようとしている。プロセス側からデータ側に着目点を移し、データを如何に説明可能な状態に置くか、そのために必要となるデータ記述方法は何かに関しての熱い議論が広く繰り広げられている。

 一般市場へ完全に定着したウェブという環境を更に活用するためのメタデータ記述に関する具体的なアプローチがいよいよ本格化してきており、データを処理するというコンピューティング元来の目的に対する革命的変革がまじかに迫って来ているようだ。圧倒的な規模のビジネスチャンスが今まさに産声を上げようとしている。(米サンノゼ発:CHIBA SHOTEN, INC. 弘中伸夫)
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