旅の蜃気楼

「そこ座って」

2003/08/11 15:38

週刊BCN 2003年08月11日vol.1002掲載

▼人の話には耳を傾けるものだ。可能ならば、ライブで聞くことをお勧めしたい。演劇や、コンサートと同じように、波動が伝わってくる。言葉以外のメッセージが伝わってくる。リーダーと言われる人はそんな技術に優れている人たちかも知れない。社会経済生産性本部が毎年開催する「軽井沢トップ・マネジメント・セミナー」に参加した。第48回だから、戦後6年目からの開催だ。当時は空腹の時代で、といっても、コラム子は2歳だから実感はないが…。

▼同本部の会長・牛尾治朗さんが開会の挨拶をした。「私も40年前の30代の時に、この会に参加しました。当時、日本はまだ海外渡航が制限されていた。そんな環境下でも、一生懸命、欧米に出かけていって、勉強した。それが、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われる頃から、勉強しなくなった」。たんたんと、日本がバブルを迎え沈没していく姿を語った。「今、人口の60%はサービス業。行政のサービスが民営のサービスを拒んでいる」。節目節目での政治的な選択の重要性を指摘する。「小泉内閣は公約の20%を実現した。あと5、6年経てば60%は実現する。今、規制緩和は40%まで進んだ。アメリカは85%が自由だ。日本も80%を実現したい」。

▼「土光臨調では国鉄、電電、専売の三公社を民営化した。いま、その構造改革の結果がGDPを支えている。小泉改革の狙いは、道路公団、郵政三事業などの民営化にある。これは経済再生のためには必要である。国から地方へ、官から民へという民間主導型社会に変えていくことが求められている」。同本部はこれに先立ち、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)を発足させた。その会議の1つ「生活者起点推進会議」では北川正恭さん、成毛眞さんがリーダー役だ。期待したい。牛尾さんはいう。「3、4年先から日本の成長の予感を感じる」。夜明けは近い。(本郷発・}間 直)▼じりじりと太陽が照りつける。関西の暑い夏は毎年、甲子園の高校野球で盛り上がる。今年はさらに特別な盛り上がりだ。いわずと知れた阪神の優勝に向けたばく進劇だ。今この時期に大阪に出向くと、盛り上がりをさらに盛り上げようとする豊かなサービス精神の関西に出会える。「阪神の優勝ですかね」と、切り出せば、立て板に水の状態で、阪神賛歌が続く。この雄叫びのパワーは関西しかない。

▼新大阪でタクシーに乗った。日本橋の電気街まで「阪神」の話題で終始した。JO SHIN(上新電機)では当然のことながら、阪神景気に沸いている。普通の盛り上がりではない。何もかもが、ごっちゃな状態で異常なほどに盛り上がっている。まるで大阪中の人が阪神ファンのような気がしてくる。そら恐ろしいばかりだ。仲間と千日前に美味しい「ねぎ焼き」屋があるから食べに行こうと、話がまとまった。日本橋からちょっと歩いて難波、その駅前商店街を通過して、お目当ての店に着いた。鉄板が「コの字」型のテーブルになっている。

▼敷居をまたぐと、「そこ座って」と貫禄のおばさん。お好み焼きの匂いが充満している。「牛スジ入りのねぎ焼き、4つ」。注文と同時にすばやく、牛スジがてんこ盛りのねぎの山ができる。「カチャ、カチャ、カチャ、カチャ」。見ていて飽きない。てんかす、紅しょうが、青海苔、かつ節の山が、手際よく丸いお好み焼きになる。裏返し、醤油を塗って、こんがり焼いて、はい出来上がり。どうもこの「カチャ、カチャ音と速度」が関西風味の原点のような気がした。一枚980円。「旨い」。(本郷発・笠間 直)
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