Letters from the World

TV-CFの世界共通化

2003/08/04 15:37

週刊BCN 2003年08月04日vol.1001掲載

 パソコンが世界共通のスペックになってから随分経つ。その昔には日本語表示のために専用のシステムが必要な時代もあったが、現在ではハードウェア自体は世界共通となり、更にここ数年はOSや各種のソフトウェアでさえ多国籍言語対応となっている。ところで先日非常に興味深いものを目にした。それは米IBMとインテルのTV-CFだ。なんとこの2社のCFは日米で同じものが放映されている。

 これまで宣伝広報活動というのは、そのエリアごとのきめ細かい対応が必須とされてきた。ところが日米で同じCFを放送するというのだから、今や製品のみならずCFまで世界共通と言うわけだ。これこそがグローバル・スタンダードなのかもしれない。もちろん世界戦略の一環であろうし、作品の水準は非常に高いのだから、製品も宣伝も世界共通と言うのは理解できなくもない。しかしこのCFの共通化は、やはりコスト削減が優先されてもたらされたものだと思う。

 元来CFの制作には莫大な費用がかかる。特に日本人が好む高品質なものは、コストも膨れ上がりがちであるから、日本法人としては、その経費を抑えるべく米法人からCFを提供して貰い、日本国内で放送しているのではないかと筆者は邪推している。リストラという言葉がある。本来はRe-structuringといい、企業の建て直しの為に人材や各種資源の有効利用を行うべく、それらの再構築を行うという意味のビジネス用語である。

 しかし日本ではいつの間にか、解雇されると言う意味で使われるのが一般化してしまった。今後グローバル・スタンダードという言葉も、コスト削減の言い訳に使う企業が続出したら、そのうち本来とは違う意味を持ちかねない。グローバル・スタンダード、そしてリストラ。安易な言葉の形骸のみを有り難く押し頂いているうちは、真の意味での日本の再生はあり得ないのではないだろうか。(ニューヨーク発:フリージャーナリスト 田中秀憲)
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