北斗七星

北斗七星 2003年7月21日付 Vol.999

2003/07/21 15:38

週刊BCN 2003年07月21日vol.999掲載

▼東京都豊島区では、8月15日まで残業禁止――。夏場の電力不足が懸念されている。東京電力による原子力発電所のトラブル隠しが原因だ。現在、15基の原発が運転再開に至っていない。平沼赳夫経産相が安全宣言を出すなど、問題解消に向けた動きはあるものの、全面的な運転再開はまだまだ先になりそうだ。

▼一方、実際に首都圏の電力不足が現実のものになった場合、地方への供給が制限されるとのニュースが波紋を呼んでいる。「首都圏のために、なぜ地方が不便を強いられなければならないのか」との怒りの声が挙がっているという。しごくもっともな反応だろう。

▼新潟県中里村の宮中ダム。信濃川をせき止めて造られたこのダムによって、河川の流水量が激減し、石ころが目立つ河原の中程にわずかな流れを残すのみになったという。かつては豊かだった川の恵みは、今は見る影もないそうだ。このダムが、首都圏のJR山手線を動かす電力を生むためだけにあることは、あまり知られていない。首都圏の豊かな生活は、地方の犠牲のうえに成り立っている一例だ。

▼経済、文化、人、あらゆるものが東京に集まる、一極集中の弊害が叫ばれて久しい。この問題を解決するために、これまでいろいろな施策が講じられてきたが、その実はあがっていない。地方に点在する原発と、その電力を消費する大都市、中央と地方の力関係…。今回の電力不足は、すべてが一点に集中する日本のいびつな構造をかいま見せる出来事だといえまいか。
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